ワンオペだとけんかになりやすい

一方、子どもの学校に関するコミュニケーションや調整のほか、子どもに関する決断をするのは、私の方が多いです。お互いの得意分野が違うというのもありますし、私が仕事で家を空けることも時々ありますが、夫はプロのチェロ奏者で、演奏旅行に出ることも多く、夫が不在になることの方が多いせいもあります。

また、コンサートは夜や週末が多いので、自然に私の方が家事や子育てをワンオペでやることが増えます。それが続くと、私もイライラしてきますし、逆に私が忙しかったりすると、夫の負担が増えてしまい、けんかになることがあります。きっかけはささいなことが多く、だいたいの場合、お互い「こういうところがイヤだ」と不満を吐き出して、最後には「食器洗いはやるよ」「ゴミ出しをやるよ」などと譲り合って終わります。

「子育ては夫婦で協力」が当たり前

夫に「家事は女性がするもの」「子育ては母親が担うもの」といった思い込みがまったくないのは、本当にありがたいです。それは夫だけでなく、アメリカ全体の雰囲気がそうなっているように感じます。

職場の小児精神科の診療現場でも、子どもを連れてくるのは父母ほぼ半々です。離婚家庭であっても、父母の両方が来ることが多いです。そして、治療方針に関する質問や、気になることの指摘なども、どちらが主ということはなく、両方が同じくらい積極的です。

実は、制度を見ると、日本の方が育児の環境は整っていると感じることがあります。例えば、アメリカは産休や育休に関する国の制度はないので、どれくらい休めるかは職場によって異なります。まったく育休が取れない職場もあるくらいです。さらに、保育園も公立のものはなく、保育料は信じられないくらい高いです。多くの家庭で「一人分の給料が毎月そのまま保育料に費やされる」とよく言われていますが、我が家でもそれが現実でした。

ただ、「子育ては夫婦で協力してするもの」という考え方が根付いているので、男女どちらかに家事や育児が偏るということは、日本よりは起きにくいように思います。

出産前の教室には2人で参加するのが当たり前ですし、分娩室にも一緒に入ります。パートナーの方も、陣痛に耐える女性のサポート、出産中の女性が必要なことを医療スタッフに伝達するなど、さまざまな役割を担っています。こうして出産を見守り、出産直後はパートナーも病院に泊まります。私が出産した時も、病院の食事は夫の分と2人分出て、一緒に宿泊しました。

病院での分娩中に妻を慰める保護マスクの夫
写真=iStock.com/Nimito
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