「輪切りにされたリング」はレガシーなのか

さらに移設案もあるが、こちらも解体と輸送、再び建築となると、費用は解体再利用や保存より高くつきそうだ。大阪府木材連合会は「2027年に横浜で開かれる国際園芸博覧会で、リングの木材を使ってもらえないか国土交通省に打診している」というが、果たして受け入れられるか。たらい回しのようにも感じるが……。

木材の研究者からは、いっそのこと「木材として残そうとせず、木材成分のリグニンやセルロースとして再利用したほうがよいのでは」という意見も出ている。それほどリングを保存するのは厄介なのである。

インパクトのある大屋根リング
筆者撮影
入場してすぐ目の前にそびえるリングは迫力あるが……。

一方、市民には「一周あってこそのリング」という声が強い。残すのは一部だけで、しかも屋上に上がれず歩けもしないのはレガシーじゃない、と思うのはもっともだろう。

リングは太陽の塔のようなレガシーになれるのか

会場建設にかかった費用は当初予定より大幅に膨れ上がってしまい、莫大な税金が追加投入されている。一方で運営費1160億円はチケット収入で賄う予定だが、売れ行きは伸びていない。有料チケット1800万枚以上が売れなければ赤字だが、現状は微妙なようだ。

今更言っても詮ないが、リングは当初の万博建設計画にはなかったものだ。建設するにしても最初から残すつもりで設計施工しておけば比較的安上がりになった。あるいは再利用や移築も、事前に決めておけば低コストで行える構造にできただろう。

この万博は、テーマの設定から各国・各企業のパビリオンの建築や展示内容まで最初から全体像が見えず、なにもかも泥縄式に決められた印象がある。今も完成していないパビリオンがあるほどだ。泥縄の最後のツケをリングが払わされるように見えてしまう。

1970年の大阪万博のレガシーだった太陽の塔が、今年5月に重要文化財に指定する答申が文部科学大臣に出された。リングもレガシーになれるのか、それとも木屑と消えるのか。まさに今が正念場である。

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