50代は健康の分かれ道
つい先日、上皇陛下が検査入院の結果、「無症候性心筋虚血」と診断され、「動脈硬化の進行」が指摘されたという報道がありました。このニュースは、私たち医療関係者にとって非常に象徴的な出来事でした。というのも、上皇陛下は普段から健康に留意され、きちんと定期健診も受けておられる方です。
それでも血管の老化は避けられず、静かに進行する動脈硬化が見つかった。まさにこれは、「症状が出ないうちに、検査で見つける」ことの大切さを物語っています。特段の自覚症状がなくても、身体の内部でじわじわと静かに起こる変化。そしてある日突然、心筋梗塞や脳梗塞が──これは、誰にでも起こりうる現実です。
50代の方々は、健康診断で異常を指摘されても「たまたま」「まだ若い」と軽く流してしまう。この年代は加齢による代謝の低下、ホルモンバランスの変化が確実にあります。しかし体調に明らかな異常が出にくい、これが一番怖い、だから検査が必要と認識してください。
血液は臓器の“声”を伝える翻訳装置
私は、血液とは「全身の臓器の声を映し出す翻訳装置」、また現代の医療はある意味臓器の老化との戦いともお伝えしています。
例えば、血液検査の悪玉(LDL)コレステロール値は、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化が原因となる病気のリスクを示します。高いまま放置されると血管内に「プラーク(粥腫)」ができ、それがある日突然破裂して血栓をつくります。つまり動脈硬化が痛くもかゆくもないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞につながる可能性があるということが推測できるのです。これは食事での改善はかなり難しいことも各種学会で報告されています。
血液が発する微かな異変は、臓器からのささやきです。こうしたささやきに耳を傾け、適切に読み解くことが、予防の第一歩です。皆さんに渡される血液検査結果表は「注意報」です。血液が告げてくれる各臓器からの「声」を正しく理解することで、早期発見、早期治療が可能になります。