「悪玉血液」が無症状の動脈硬化を加速させる
前回(第1回)では、「無症状に進む動脈硬化」を防ぐために、50歳を過ぎたら「絶対に受けるべき検査」と取り組むべき「3つの習慣」についてお話ししました。今回は、その続編として「悪玉血液」の恐ろしさをお話しします。
「悪玉血液」とは、粘り気のあるドロドロした血液です。私が患者さんに「悪玉血液」という言葉を用いると、血液の状態を直感的に理解してくれます。正式な医学用語ではありませんが、非常に便利な造語です。「ドロドロの悪玉血液が流れてますよ」とお話しすれば、頑固な患者さんにも感覚的に「まずいかも」と思ってもらえる。生活習慣を変えなくては、という強い意志が芽生える。それが意識改革の第一段階です。
血液がドロドロになると血流が悪くなります。そして、血管の中に含まれるLDL(悪玉)コレステロールや脂肪がたまりやすくなります。これが積み重なるとやがてプラーク(血管の壁に付いた動脈硬化巣)になり、血管を狭くし、動脈硬化が進みます。また、ドロドロした血液は内膜にダメージを与え、血小板を刺激して血栓(血のかたまり)がつくられます。こうしてある日突然、心筋梗塞や脳梗塞が発症しやすくなります。
ボロボロになった血管は元に戻らない
そもそも「血管がボロボロになる」とはどういうことでしょうか。例えば、動脈硬化の進行は6段階に分かれて説明できます。
1.血管の内膜がダメージを受け、炎症反応が起きる
2.コレステロールなどが蓄積し、プラークになる
3.プラークが大きくなって血管が狭くなる
4.カルシウムが沈着し、血管が石灰化・硬化する
5.内膜がさらに脆くなって破れやすくなり、血栓ができる
6.血圧がかかって血管がこぶのように膨らみ、最終的には破裂のリスクが高まる
私の感覚では、「ボロボロ血管」は10年、20年かけてゆっくり進行する「あなたの見えないリスク」です。60歳でピカピカの血管の人もいれば、40代でボロボロの人もいます。あなたの生活習慣が、あなたの血管をつくるのです。そして残念ながら、一度ボロボロになった血管は元には戻りません。劣化した輪ゴムと同じで、柔軟性を失い、伸ばせば切れてしまいます。