血管が詰まっても破れても、それは実は「突然発症した」のではなく、「ずっと進行していた結果が、ある日表に出た」のです。さらに怖いのは、自覚症状がないまま進行する点です。時限爆弾を抱えて生きているようなものだと、私は患者さんにお話しする事もあります。

私は糖尿病、内分泌、高血圧が専門の内科医です。「血管が詰まった」「血管が裂けた」「血管が破れた」といった、まさに命に関わる症状になる前に治療を行う専門家です。しかし、血管の中は見えないからこそ、症状がないうちはつい軽視されがちです。

血管がボロボロに壊れてからでは遅いのです。目には見えないけれど、血液と血管はあなたの命を支える最前線。あなたの人生がかかっているといっても過言ではありません。ぜひ「今」からでもサラサラな「善玉血液」を育てて、ボロボロ血管にブレーキをかけてください。

坂本医師
撮影=プレジデントオンライン編集部
坂本医師

臓器にも悪影響、病気リスクを高める

悪玉血液が引き起こすリスクは、たくさんあります。心臓、脳、血圧、腎臓、さらには糖尿病の合併症にまで影響を及ぼします。以下の疾患は、「突然死」や「寝たきり」を招く重篤な病気です

● 心筋梗塞
● 脳梗塞・くも膜下出血
● 高血圧
● 慢性腎臓病

これらの兆しをつかむため、脂質(LDL・HDL)、血圧、eGFR(腎機能)――この3つの検査結果は私が最も注意して見ている数値です。患者さんにも、「これだけは絶対に見ておいてください」と強調しています。一つでも引っかかったら、それは「イエローカード」。二つなら「レッドカード」。三つ当たったら「即アウト」です。

そしてこの「即アウト」の基準には、医学的な根拠があります。例えば糖尿病患者さんにおいてはガイドライン上でも、LDL(悪玉)コレステロールの基準値はどんどん厳しくなってきており、かつて140mg/dLだった基準は、120とされ、そして現在では100mg/dL未満が推奨されるようになっています。

つまり「以前は大丈夫だったから今も大丈夫」と思っていたら時代に取り残されてしまいます。基準は進化し続けているのです。ですから、健康診断は習慣化してください。意外ですが、「見た目が健康そうな人」も意識して注意してほしいと強く思います。体型や年齢ではなく、目には見えない「血液の質」がリスクを決めるのですから。

健康診断では見抜けない

健康診断を受診することは大変重要なのですが、正直なところ健康診断ではわからないこともあります。実際、血糖値やコレステロール値が正常でも、血液の質そのものが悪化しているというケースがあります。いわば、「隠れ悪玉血液」の状態です。